日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 303
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四万十川流域を対象とした間伐材利用による流域環境経営システムの開発
*馬渕 泰, 東 浩太郎, 那須 清吾
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抄録

1. はじめに
 本研究では,「環境」「林業」「地域活性化」の観点から,森林が持つ効用を次世代に渡り維持管理していく流域環境経営分析モデルを提案する。さらに,その適用モデルとして森林間伐の間伐材利用による木質バイオマス発電事業に着目し,森林の公益的機能を維持させるとともに,森林間伐や木質バイオマス発電コストと地域住民のニーズを両立させる流域環境経営システムについて検討する。
2. 木質バイオマス発電の流域環境経営分析モデル
 本研究では,流域における間伐の促進を図るとともに,自立的な林業経営を実践していくための手段として木質バイオマス発電事業を展開する。
 流域環境経営システムで検討する分析モデルは,森林組合等から提供される木材を中間処理業者や燃料供給業者に提供し,それをバイオマス発電業者にて発電する。発電をした電力を電力会社に売電するまでを対象とする。今回の検討では間伐から売電までをグループ事業とみなし,間伐から発電までにかかるコストを総費用曲線として,売電による収入を総収入曲線として表す。なお,総収入が総費用と均衡しない場合は,補助金などを投入して均衡させる方法も考えられる。
3 流域環境経営分析モデルの検討手順
 四万十川流域における年間発生間伐量の推定を行った上で,評価関数を設定した。その結果から流域経営の可能性分析を行い,経営を成立させるための森林間伐整備のあり方を提案した。間伐コストの算定は,始めに四万十川流域において発生が予想される間伐材積量を推定し,次に,間伐業者の間伐率の変化における間伐コストの算出とそれに応じて発生する間伐材積を用いることで,バイオマス発電業者の発電コストを算出した。収入曲線の導出については,売電は住民と企業の支払い意思額と仮定し,総費用曲線によって求めた発電量を売電単価(8.11円/kWh)で売電する時に得られる収益を算出した。
4. 流域環境経営の可能性
 四万十川流域で発生する間伐材を用いてバイオマス発電し,売電単価(8.11円/kWh)で売電するシナリオでは,総費用曲線が総収入曲線を上回っており,どの間伐率でもバイオマス発電事業は成立しない。そこで,経営が均衡する操業点を調査すると,現在高知県で実際に行われている森林環境税による補助金(8万円/ha)やバイオマス発電によるCO2削減効果をCO2排出権取引(664円/t)に追加するだけでなく,別途補助金として,1haあたり379,500円追加することにより収益とコストが均衡した。この時,業者は流域年間19.66%の間伐を行うことで経営が均衡する。この追加分を四万十川流域住民(102,700人)に負担してもらう仮定を設けると,月あたり1,418円負担する必要がある。また,補助金を追加するのではなく,今後,重油の値上がりによる売電単価の上昇を仮定すると,11.10円/kWhになることで経営が成立する。今後は,社会の変化に対応して総費用曲線及び総収入曲線の精度の向上を検討し,質の高い均衡分析を行っていく必要性がある。
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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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