抄録
静岡県伊豆半島は日本有数の観光地であり,特に民宿集落が発達した地域として知られている。1980年代前半に民宿業は最盛期を迎えるが,1990年代以降は一転して民宿数の減少が続いている。近年では民宿集落の高齢化が進み,高齢者による民宿経営が目立つようになっている。本報告では,西伊豆の代表的な民宿集落である松崎町雲見地区を取り上げ,民宿経営の実態とその維持における高齢者の役割を検討する。
近年における民宿数の減少は宿泊客数の減少ばかりでなく,高齢化に伴う労働力の調達の変化に基づく対応の結果として理解できる。ただ,担い手の高齢化はすぐに廃業に結びつくわけではなく,可能な限り経営を維持しようとする対応が存在している。とかく高齢化はマイナス要因として論じられがちであるが,高齢者は何らかの形で民宿の経営に関与しており,民宿集落を支える存在であることに注目する必要があるだろう。