抄録
1.活動の位置づけ
2007年3月25日に発生した能登半島地震では,輪島市を中心に家屋やインフラ,生活などに様々な被害,影響が確認された(詳細は,青木・林,2007a).一方,同地震は海底で発生したものの地震の規模が小さかったこともあり,大規模な津波が発生しなかった.青木・林(2007b)で報告するように,輪島市・志賀町の中学校の生徒・保護者を対象としたアンケート調査によると,海岸線を抱える地域での強振動をともなう地震であったが,地震発生時に津波の想起や避難の実施に至らなかった住民が少なからず存在していた.同地域では過去にも,日本海中部地震などによる津波を経験していたにもかかわらず,住民の津波に対する警戒意識や避難行動に課題がみられた.
今後,津波が発生した際に,迅速かつ適切に避難行動が取られ,人的被害を最小限に食い止めるには,地域住民が日頃から地域の環境特徴やそれにともない負うことになるリスクを把握し,避難場所・経路や避難方法などを認知,確認しておくが重要である.そこで本研究では,地域住民の津波や避難行動への関心醸成や避難場所・経路の理解を支援する活動に取り組むことを目的とする.
2.活動内容と今後の取り組み
本研究では,アンケート調査に対し協力を得た中学校のうち,輪島市東部に位置する南志見中学校校区を事例に取り上げる.支援活動ではまず,現地調査により津波被害の危険性が考えられる場所・範囲や,避難に利用し得る場所・経路を確認,記録した.それを元に,県・市の地域防災計画の情報や,発生時間帯・季節等の条件変化にも考慮しながら,警戒すべき範囲や利用可能な避難場所・経路を地図化した.
南志見中学校校区では,海岸線と丘陵にはさまれた狭い低地部や,丘陵に刻まれた谷沿い,南志見川河口付近の標高の低い谷底平野に居住する住民が多い.「津波避難マップ」では,避難場所・経路を提示する際に,上述の地域特徴や負うことになるリスクにも触れながら取るべき行動等を解説し,視覚的に認知・記憶できるように関係地点の写真を添付した.今後の取り組みとして,中学校や地域にマップを贈呈し,これを用いて実際に歩いて避難経路・場所を確認するワークショップの実施や,津波や避難行動についての授業提供を検討,準備している.