日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P850
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衛星データによる環境変化把握の試み
LANDSATデータとQuickBirdデータを用いた太宰府市周辺地域の環境解析
*後藤 健介西木 真織黒木 貴一磯 望
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抄録

1. はじめに
 広域の環境変化を効率よく捉えるには、衛星データによるリモートセンシング解析が適しているが、分解能が1mを上回る高解像度衛星の出現により、環境変化を捉えるためのリモートセンシングの技術は飛躍的に向上したと言える。本研究では、今まで地球観測によく用いられてきたLANDSAT/TMデータと、高解像度衛星QuickBirdデータを用いて同一対象地(福岡県太宰府市周辺地域)の土地被覆分類を行い、結果を比較することで、高解像度衛星データによって環境変化を捉える際の問題点等について検討する。
 また、2時期のデータを用いて解析することで、経時変化についても解析し、2種類の衛星データによる太宰府市域の環境変化の動向について調べる。

2. 研究方法
 QuickBirdには、パンクロ(分解能0.61~0.72m)とマルチスペクトル(分解能2.44~2.88m)の2種類のセンサーが搭載されているが、今回は土地被覆分類に必要なマルチスペクトルデータをより高解像度のパンクロマティックデータの解像度に合わせるため、データフュージョンによるスケーリングアップを行った1)。このデータフュージョンを行う際に、可視光線バンドのみを用いたデータフュージョンと、近赤外線バンドを含めたデータフュージョンを行い、2種類のスケーリングアップしたマルチスペクトルデータを作成しするとともに、これらのデータを用いて、最尤分類法による教師付き分類を行った。
 同様にLANDSAT/TMデータを用いた最尤分類法による土地被覆分類を同じ太宰府市域を対象として行い、それぞれの結果を比較した。

3. 結果
 QuickBirdの使用バンドを変えた土地被覆分類を行った結果、近赤外線バンドを加えない場合は分類精度が低下した。これは、植生をうまく捉えることができなかったためと考えられる。
 次に、同じ場所においてLANDSAT/TMデータを用いて土地被覆分類を行った結果と、QuickBirdデータを用いた結果とを比較すると、これらの図から、QuickBirdデータによるものは詳細に土地被覆分類が行われているが、実際には影の部分が水域と誤分類されたものが多いことが分かる。しかし、LANDSAT/TMデータによるものは影の部分を誤分類したケースは少なかった。 これらのことから、高解像度の衛星データを用いて土地被覆分類を行う場合は、影も精度よく捉えているため、影を分類クラスに含める必要があることが分かった。

4. おわりに
 今回、LANDSAT/TMとQuickBirdの2種類の違う解像度の衛星データを用いて同一地域の環境変化を調べることで、次のようなことが分かった。
(1)高解像度衛星データからフュージョンデータを作成することで、より詳細な土地被覆分類を行うことが可能となった。
(2)データフュージョンによってスケーリングアップを行ったマルチスペクトルデータを作成する場合、近赤外線バンドを含めなければ土地被覆分類を行う際に誤分類が多くなる。
(3)高解像度のQuickBirdデータを用いて土地被覆分類を行う場合、影の部分も分類クラスとして土地被覆分類を行う必要がある。

参考文献
1)後藤健介、谷村 晋、都築 中、VU DINH THIEM、MOHAMMADA ALI、野内英樹:途上国のGISマッピングにおける高解像度衛星データの適用、第47回日本熱帯医学会・第21回日本国際保健医療学会合同大会プログラム抄録集、p114、2006.
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© 2007 公益社団法人 日本地理学会
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