抄録
高知県四万十川は、ダムが存在しない「日本最後の清流」との一般的イメージが強い河川である。しかし、四国の西南部に位置し、台風進路に当たる多雨地帯で集中豪雨も多いため洪水が頻発し、地域住民はたびたび被害を被っている。高度経済成長以降の河川改修の影響が比較的少なかったことは否定しないが、築堤・河床掘削・中筋川ダムをはじめとするダム建設など、昭和4年より直轄河川改修がおこなわれてきた。
一方で、四万十川では数種類の伝統的な洪水対策や治水工法を現在でも見ることができる。四万十川流域の象徴的景観の一つとして知られている沈下橋や水害防備林が残存するとともに、根固床止工の一種の木工沈床も、昭和初期より施工されてきた。また、新河川法が施行された1997年には粗朶沈床や木工沈床などの伝統的治水工法が再現施工された。
本発表では、自然的景観を維持することが全国的に期待されている四万十川において、残存している伝統的な洪水対策・治水工法である沈水橋・水害防備林などについて現地調査をおこなったので報告する。