日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 429
会議情報

甲府地域における経営コンサルティングサービスの需給特性
*新名 阿津子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.本報告の背景
 日本における事業所サービス業の立地は,東京一極集中を示している.この東京一極集中を引き起こす要因を明らかにするために,東京都港区における経営コンサルタント企業の立地特性とその要因を検討した新名(2006)では,東京都心への立地は交通の利便性,顧客への近接性,ニーズに合致する不動産の存在などの「都心性」と,企業設立主体との近接性が立地要因して働いており,その展開は都心内部で完結していることから,結果として東京一極集中パターンを示していると結論付け,東京都心以外の地域への分散化の可能性は低いと指摘している.
 このように東京都心からの分散化の可能性が低い経営コンサルタント業が,地方においてどのように成り立っているのかを明らかにする必要がある.さらには,経営コンサルティングサービスがどの地域から供給されているのか,それは同一地域内からなのか,近隣地域からなのか,東京をはじめとした大都市圏からなのか,つまり,経営コンサルティングサービスの供給地を明らかにする必要がある.

2.本報告の目的
 本報告では甲府地域を事例に,需要者,供給者,仲介者の関係に着目して,経営コンサルティングサービスの供給地と,地域内におけるサービスの需給特性を明らかにすることを目的とする.

3.調査対象
 本報告が対象とするのは,サービス需要者である中小企業,サービス供給者である「専門家」,供給者と需要者を仲介する「中小企業支援組織」である.特に,供給者と仲介者については,商工指導団体(甲府商工会議所・(財)やまなし産業支援機構)と,そこに「専門家」として登録している企業・個人を対象とした.
 調査対象選定に当たって,経営コンサルタント業などの特定業種ではなく,商工指導団体とそこに登録する専門家に着目するのは,日本の地方都市ではこれらが果たす役割が非常に重要であると考えられるためである.

4.調査概要
 本調査では甲府盆地における経営コンサルティングサービスの需給特性について実態を把握するため,まず商工指導団体に対して中小企業支援についてのインタビューおよびデータ収集を行った.専門家集団については,その分布を確認できるデータを商工指導団体から入手し,さらに,専門家集団の立地特性,立地要因,取引関係,キャリアパス,資格取得状況を明らかにする目的のもとでインタビューおよびアンケート調査を行った.

【参考文献】
新名阿津子 2006.東京都港区における経営コンサルタント企業の立地特性とその要因,地理学評論79:423-434.
著者関連情報
© 2007 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top