日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: P714
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北上山地,安家カルストで認められた中期更新世のテフラの特徴
*岡本 透早田 勉
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抄録

 本報告では、北上山地ではほとんど報告されていなかった中期更新世に降灰したと考えられるテフラを北上山地北東部の安家カルストで確認し、その岩石記載的特性と火山ガラスの主成分化学組成について述べる。岩手県久慈市山根地区に分布する安家石灰岩に発達するカルスト台地上の平坦面(白樺平面:標高400~550m)の縁辺部の露頭で試料を採取した。テフラとローム質土層からなる層厚約6mの土層からなる露頭は、不整合を挟み上部層と下部層に分けられる。上部層には、地表から2mの深さに厚さ約3~6cmの淡灰色の細粒ガラス質火山灰Toyaが認められる。Toyaの約1.5m下位に不整合が認められる。下部層の基底は安家石灰岩とその風化層からなり、それらの凹みを覆うように厚さ20~30cmの黄橙色の軽石層(山根テフラ(YT)と仮称する)が堆積する。YTは層厚約1.5mのローム質土層に覆われる。
 YTに多く含まれる発泡した無色透明の繊維束状の軽石型火山ガラスは直線的な線状構造を持ち、長径5mmを越えるものも多く、非常に特徴的である。重鉱物組成は角閃石の含有率が高く、角閃石型のテフラの組成を持つ。低屈折率の火山ガラスの主成分化学組成は、SiO2含有量が高く、若干K2Oに富むという特徴を示す。現段階においては、YTの特徴に似たテフラは知られていない。しかし、三陸沿岸北部の下閉伊郡普代村鳥居付近に分布する更新世中期の海成段丘の被覆層中に、YTの岩相に似た層厚20cmの黄橙色粗粒軽石層が認められている。この軽石層は、繊維束状の軽石型火山ガラス(屈折率n=1.493-1.496)を多く含むため、YTに相当する可能性が高い。
 北上山地北東部の安家カルストのカルスト台地上に分布する平坦面やドリーネは地形的に安定しており、周辺の山地と比較して風成堆積物の保存が良いため、山間部におけるテフラの分布調査に適していると考えられる。今後、安家カルストを含めた周辺地域においてYTの分布調査および分析が進展すれば、YTは三陸沿岸の高位海成段丘の編年に対して有効な指標となる可能性が高い。

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