日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: P715
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加越海岸における海岸線の変化について
山中 玲*青木 賢人
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抄録

1.はじめに
近年,日本の多くの海岸において,砂浜が減少し,海岸線が後退する海岸侵食が問題視されている。これまで,海岸侵食に関する研究は数多くなされているが,海岸侵食の経年変化を取り扱っていても断片的で調査期間が短いということ,問題解決策のための侵食対策工法について重視していること,汀線変化を載せているものはあるが,場所を把握しづらいということが挙げられる。
そこで,本研究では加越沿岸全域について明治時代から現在までを調査期間とし,海岸に構造物が建つ前,つまり人為的な要因があまり無い時代から海岸線の変化を経年的に把握することを目的とし分析を行った。

2.研究対象地域
石川県羽咋市滝町滝崎~福井県坂井市三国町黒目福井新港までの加越海岸を対象地域とした。この海岸は,先行研究において全国的に見ても顕著な海岸侵食が発生している地域であり,調査期間内にダム建設,砂利採取,護岸工事など人の手が加えられている。また,加越海岸は1つの漂砂系であり,海流により南から北へ運ばれる沿岸漂砂,波により北から南へ運ばれる沿岸漂砂,波の往来による岸沖漂砂がある。それに加えて河川(主に手取川)からの土砂流入がある。砂の移動について考察するには漂砂系全体を把握する必要があるが,先行研究では加越海岸の一部のみしかなされていない。

  3.解析方法
研究対象地域全域の1909年測量2万分の1地形図・5万分の1地形図,1947年・1968年・1974年・1989年・2002年に撮影された空中写真をテジタル化し,GISにより簡易的に幾何補正し,それらを重ね合わせた。次に幾何補正をした地形図・空中写真から読み取ることができる海岸線を年代ごとにトレースし,トレースした海岸線を1000m区間に分割し,各年代間の変化量を求めた。

4.結果
これらの作業により,研究対象地域全域の海岸線の変化を地形図上で表すこと,各年代間の面積変化量(_m2_)を計測した上で,海岸線の変化量(m)を計算すること,更に海岸線の変化量を時空間のメッシュ図にし,経年変化を表すことができた(図1)。その結果、研究対象地域全体では,1909年~1947年において,1年間当たりの海岸線の変化量は0.10m/年の後退,1947年~1968年では0.09m/年の後退、1968年~1974年は更に後退し,0.39m/年の後退であった。しかし,1974年~1989年には前進に転じ,0.23m/年の前進,1984年~2002年には0.02m/年で前進している結果になった。また,個別の地域でも海岸線の変化は顕著に表れており,千里浜海岸では1909年~1947年の間に約70m後退した。

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