日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: P717
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北上低地西縁断層帯花巻断層周辺の断層露頭
*小坂 英輝立石 良三輪 敦志鎌滝 孝信今泉 俊文
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抄録

 筆者らは,北上低地西縁断層帯において,地下深部から地表に至る活断層の地下構造と形成過程の解明を目的とし,地形地質調査を行っている。その中で,花巻断層周辺部の現在工事中の切土法面において,低地内の前縁断層のほか,前縁断層および山地縁の境界断層に関連する褶曲構造を観察することができた。以下,その結果を報告する。  切土法面は,岩手県花巻市鍋倉下堰田に位置する。切土法面周辺の花巻断層の変動地形は,山地縁に推定されるが,位置を明確には特定できない。前縁断層の露頭は,山地縁の崖より200m低地側に位置する。  前縁断層露頭の地質は,後期鮮新世~更新世三ツ沢川層およびL1面段丘堆積物である。三ツ沢川層は,シルト岩および亜炭からなり,L1面段丘堆積物は,下位より砂礫およびシルトからなる。L1面構成層のC14年代とL1面を覆うKPの噴出年代により,L1面の離水年代は約20kaと推定される(渡辺,1991)。断層は,L1面およびL1面構成層に2m以上の上下変位を与え,現在の表土に覆われる(図1)。  本調査地の模式地形地質断面図を図2に示す。断層は,前述した前縁断層(F3),中新世湯本層が三ツ沢川層の上に衝上する断層(F2)のほか,三ツ川沢層の地質構造により推定される断層(F1)が認められる。断層に関連する褶曲構造は,F1推定断層の先端部で,山地側が急傾斜となる非対称な向斜構造,F2断層の上盤側で,前翼が急傾斜となるキンク褶曲構造,F3断層の上盤側で, 30m程度山側に向斜構造が認められる。断層運動の時期は,段丘堆積物を切る前縁断層(F3)で新しく,三ツ沢川層を切る山地縁の境界断層(F2)で古い。前縁断層(F3)のデタッチメントの深度は,面積バランス法によると(段丘堆積物砂礫層上面を変位基準としたとき;増加面積84.4m2,短縮量3.3m),地表から25m付近に求められる。  前縁断層のデタッチメントは,断層の断面位置からF1推定断層へ連続すると推定される。この断層の地下構造と,断層の活動時期が前縁断層で新しいことから,断層運動は,山地縁の境界断層から前縁断層へ前進したと推定される。  今後,山地縁の境界断層についてもバランス断面法により地下構造と形成過程の検討を行う。

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