日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: P721
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2008年岩手・宮城内陸地震にともなうマスムーブメントタイプと分布
*八木 浩司佐藤 剛山崎 孝成
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抄録

2008年6月14日に発生した岩手―宮城内陸地震は,栗駒山から流れ出る一迫川,二迫川,三迫川,磐井川および胆沢川上流部に多くの地すべり,斜面崩壊を引き起こした.筆者らは,地震後に撮影されたアジア航測撮影の1/1万カラー空中写真判読を実施し,マスムーブメントのタイプごとに1/2.5万地形図上に斜面災害分布図を作成した.今回発生したマスムーブメントはいずれも,移動速度からみれば高速すべり・崩壊であるが,形態から深層地すべり,崩壊性地すべり,浅層崩壊および土石流に区分された.深層地すべりは,荒砥沢ダム上流域に発生した大規模なものが知られているが,発生数は少ない.今回発生したマスムーブメントの大半は,栗駒山中腹に分布する火砕流堆積面を切る谷壁斜面沿いの崩壊性地すべり,浅層崩壊である.とりわけ一迫川流域で集中した分布が認められる.それらは遷急線下部を冠頂部として発生し,垂直に近い溶結凝灰岩・溶岩部ではトップルから崩落したものもあろうがここでは崩壊に一括した.土石流は駒ノ湯温泉を押し流したドゾウ沢沿いのものや産安川上流のものの規模が大きい(八木ほか,2008).しかし,耕英地区の火砕流堆積面を浅く開析する谷の勾配の緩やかな谷底で集中して発生している.  上述したマスムーブメントの分布から崩壊,崩壊性地すべりは火砕流堆積物がなす急傾斜の谷壁斜面上部に集中している.これは傾斜の急な斜面上部で加速度が大きくなったことを意味している.一方,深層地すべりや,緩い勾配の谷底で土石流が耕英を中心に発生していることは,ここで斜面下部や谷底部で大きな剪断力が長時間継続して発生したことを示している.いずれにせよ2004年中越地震や2005年パキスタン北部地震において斜面災害が起震断層直近あるいは上盤側に集中して発生したこと(八木ほか,2006;八木・千木良,2006)を勘案すれば,少なくとも栗駒山南東側山麓は起震断層直近の上盤側に位置していたものと考えられる

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