日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: P727
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土地利用分析からみた陸域環境変遷
-松山平野と別府湾沿岸地域を事例として-
*堤 純
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抄録

本報告は松山平野と別府湾沿岸域を対象に,明治期から現代に至る約100年間の土地利用変化を分析した。ジオレファレンスした明治期と最新の地形図から土地利用ポリゴンを作成し,それらを100m間隔(松山平野)あるいは250_m_間隔(別府湾沿岸域)のポイントフィーチャーとオーバーレイすることにより,土地利用データのメッシュサンプリングを行った。
本稿で分析の基本としたのは,松山市役所から入手した1997年の土地利用データである。このデータは航空写真から作成したポリゴンデータであった。しかし,この種のデータの質は元データの解像度に大きく規定されるため,スキャニングによる読み取りデータをそのまま分析に採用するにはいくつか問題がある。また,比較対象とする他年次のデータの作成方法との整合性も考慮して,以下のようなサンプリング方法を採用した。
ArcGISを用いて,松山平野周辺の国土数値情報の3次メッシュ(約1km×1kmグリッド)内をさらに東西・南北方向にそれぞれ10等分した「1/10細分区画」ポリゴン(約100m×100mグリッド)を作成し,ArcGIS9に付属のスクリプトを用いて各1/10細分区画ポリゴンの中心点からなるポイントシェープファイル(以下,100mグリッドポイント)を作成した。1997年のポリゴンの土地利用データと,100mグリッドポイントをGISの空間結合機能を用いてオーバーレイした。この方法により1997年の土地利用情報をもった100mグリッドポイントが作成できた。これらのデータは約100m間隔にほぼ等間隔に並ぶ規則的な点で土地利用をサンプリングするようなイメージである。元データの作成時の読み取りエラー等の問題も,こうしたサンプリング方法を採用することで克服できる。
比較対象となる1905(明治38)年頃,1928(昭和3)年頃,1970(昭和45)年頃の土地利用データについては,各年次の1/25,000地形図を用意し,それらを大型スキャナで読み取った電子データ(tiff画像)に対して緯度経度座標を付与し,ArcGIS9上で表示できるようにした。各年次とも,画面上に表示した地形図をもとに,マウスを用いた手入力で土地利用のポリゴンを作成した。作成したポリゴン土地利用データと100mグリッドポイントを空間結合させ,それぞれの年次の土地利用データ(各年次の100mグリッドポイント)を作成した。
別府湾岸地域については,対象地域が広範囲に及ぶため,サンプリングを行なうグリッドの間隔を250mとした。分析の基本となる旧版地形図や現在の地形図のジオレファレンスについては,松山平野の場合とほぼ同様の方法によりデータを作成した。
これらの結果,都市化の進展と農地の減少,森林面積の減少など,社会的・経済的視点からみた環境変遷の特徴が明らかとなった。

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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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