日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: 307
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中国内蒙古における砂塵暴の発生とその気候条件
*境田 清隆咏 梅大月 義徳
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抄録

1. はじめに
 中国内蒙古の砂漠化は、日本に飛来する黄砂の増加などからも注目されてきたが、内蒙古の砂漠化と日本で観測される黄砂との間にはいくつもの媒介項が存在する。発表者らは2003年度から内蒙古の砂漠化を共同で研究してきたが、ここでは現地観測による砂塵暴の観測事例と、砂塵暴発生に関わる気候条件の考察結果について報告する。
2. 方法
 発表者らが対象地域としてきた中国内蒙古自治区武川県五福号村において、2007年4月1日~6月23日および2008年4月1日~6月14日の期間、自動撮影の定点カメラ(KADEC21-EYE2)を用いて砂塵暴の発生調査を実施した。昼間1時間間隔で得られた画像により、約1km隔てた林地が砂塵で隠れた日時を砂塵暴発生時とした。またカメラから約2km離れた大豆鋪郷役場で気象観測を実施しており、当該期間における気温・降水量・気圧・風の時間値と比較した。さらに土壌の凍結・融解も重要な条件と考え、地温および土壌水分の測定も行なった。
3. 砂塵暴の発生
 2007年で砂塵暴が発生したのは5月10日15~17時のみであった。気象観測結果によれば15時に最大風速13m/sを記録し、気圧は2時間前の13時に極小を記録し、気温は15時に大きく降下している。このような気圧と気温の変化傾向から、近傍を低気圧が通過し、一時的に暖域に入ったものの、15時には寒冷前線が通過し、気温が低下し風速が強まったことが想定された。
 実際に前後の天気図から当該地域の北方から南方まで深い気圧の谷が通過し、寒気の流入も著しかったこと、砂塵暴は内蒙古各地で広範に発生したことが判明した。またこの低気圧はその後日本海付近で発達し、これに伴い14日から17日にかけて西日本を中心に黄砂が観測された。  
 期間中に13m/s以上の強風は5/11、5/15、5/24、5/26、5/31、6/7の6日間で観測されたが、砂塵暴の発生は5/10のみであった。砂塵暴は強風だけでは起こらず、発達した低気圧と寒気流入、これらに伴う上昇気流の存在が必要条件として挙げられよう。
4. 地温と土壌水分
 地表の乾湿もまた砂塵暴の発生には重要な条件と考えられる。冬季に凍結した土壌は3月末から4月末にかけて地表面から融解が進行し、その際、土壌水分の上昇が観測される。この時期が早まると、雨季の到来まで土壌水分の低下季(乾燥季)が長引くことになる。春季気温が異常に高かった2002年は、まさにその状態で砂塵暴が多発した可能性がある。(本研究は科研費基盤研究B 代表者大月義徳No.20401005を使用している。)

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