日本地理学会発表要旨集
2008年度日本地理学会秋季学術大会・2008年度東北地理学会秋季学術大会
セッションID: 522
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山形市における郊外開発の特徴と今後の課題
*山田 浩久田中 正人川端 不美ニ宮本 景太郎
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抄録
 本研究では,山形県山形市を事例にして,郊外開発の実情をGISを用いた土地利用分析から定量的に把握し,集約型都市構造への再編に際して生じる課題とその対応策を指摘した。分析の結果は以下のように要約される。
 郊外開発は,山形市やその周辺市町村の住民に短期的な便益を与えるであろうが,山形市全体での事業所数や人口に変化がない現況での大規模開発は,同事業が成功すればするほど,市域内のどこかに衰退地区を生み出していく。行政と住民は,ともに「開発がさらなる衰退を招く」という地方都市の構造を理解する必要がある。また,郊外核を中心とする商圏は市域を越えて広域化する傾向にあり,周辺市町村の商業活動にも影響を及ぼしている。これらの問題に対して,郊外核の規模縮小や郊外開発の規制強化を提案するだけでは状況を改善させることにはならない。弊害が生じているとはいえ,郊外核での商業活動は中心市街地でのそれを大きく上回っている。郊外核の規模縮小は山形市全体の商業活動を低迷させることになるだろう。また,郊外地域では既に郊外核を中心にした日常生活が営まれており,既成郊外核の存続が市民生活の利便性維持に直結している。郊外開発の規制に関しても,郊外開発に向けられる資本や意識を他所に向ける方策が採られない限り,規制は都市の活性を低下させるだけである。例えば,既存事業所活動の維持を前提にする再開発事業を大幅に見直し,新規事業のための都市施設を新たに建設していくことを提案するだけでも,中心市街地に対する市民の意識は変わってくると考える。集約型の都市構造は,規模の縮小や開発規制によって達成されるものではなく,あくまでも都心部に対する都市機能の再集積によって達成されるという意識を持つことが重要である。
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© 2008 公益社団法人 日本地理学会
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