日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: P0929
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インド、アルナチャル・プラデシュ州(アッサム・ヒマラヤ)、ディランゾーン地方における自然環境と人間活動について
*水野 一晴
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抄録
インドのアルナチャル・プラデシュ州は、ブータンと中国・チベットとの国境に近く、22-24のチベット系民族(細分化すれば51民族)の住む地域である。今回は、とくにディランゾーン地域の植生と伝統的な森林管理に焦点をあてて報告する。
1.アルナチャル・プラデシュのディランゾーン地方では、コナラ(BainangShing: Quercus griffithi他)の落葉が肥料として農業に重要な役割を果たしている。
2.コナラの落葉は、トウモロコシの裏作の大麦(標高1790m以下)およびソバ(1790-2000m)の栄養分のためと雑草の生育を妨げるために主に利用されている。
3.住民からの近接性や利用条件の違いなどから、森林がSoeba Shing「落葉を集める森林」, Borong「手をかけない森林」(薪を集める地域), Moon「深い森」(建材を得たり、狩猟を行う地域)の3つに区分されている。 それらの3つの森林は、管理のあり方が異なり、特に、集落の周辺の、最も近接性の高いSoeba Shing「落葉を集める森林」は、人為的にコナラの純林に統制され、伝統的な慣習のもとに厳格に管理されている。
4.Soeba Shingのコナラの落葉は住民にとって財産であり、基本的に住民間で落葉の譲渡はなく、そのためすべての住民がSoeba Shingを所有している。
5.Moonは、時代とともに住民からの近接性が高まるにつれて、伐採され、マツ(Lensong Shing: Pinus wallichiana)の多い二次林に遷移し、Borongとなる。
6.土地は、Soeba Shingが個人所有、BorongとMoonは、クランの所有であるため、それぞれの区域で、その利用が個人およびクランに制限される。
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© 2009 公益社団法人 日本地理学会
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