日本地理学会発表要旨集
2009年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 419
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「日本総国風土記」分類の試み
*立岡 裕士
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キーワード: 日本総国風土記, 近世, 地誌
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抄録

 「日本総国風土記」(以下「総国風土記」)は、近世初頭に古風土記を模造して作られた偽書とされる。しかし「総国風土記」は単一の文献と見なすことが困難なほどに多様な形式・内容の写本群として残存している(「総国風土記」という名称を冠した一群の文献が伝えられる一方、それと類似した内容をもちながら「(某国)風土記残篇」といった名称をもつものがあり、また外題的に「総国風土記」として一括されながら内題的には「総国風土記」という名称をもたない文献もある。報告者は当面、「総国風土記」を一群の文献に対する総称として最広義に用いることにする。すなわち、和銅~延長に撰進された古風土記、近世以降に古風土記とは異なるものであることを明示しながら編纂された「新風土記」、のいずれにも属さない「風土記」を「総国風土記」と呼ぶ)。
 「総国風土記」の検討は早川(1987)の提起にもかかわらずほとんど進んでいない。「総国風土記」について検討することは、それが受容されたことを通して近世初頭の地誌的知識希求の風潮について考えるための基礎作業である。さらに「総国風土記」作成の原資料について検討することにより、存在が推定される「失われた中世日本地誌」について考えるよすがとなろう。本報告はその端緒として「総国風土記」の分類を試みる。
 現存する「総国風土記」は『日本古典籍総合目録』(国文学研究資料館)に収録されただけでも44機関に164部の写本が存在する。近世に地方史誌類などに翻刻収録されたものもある。年代の確実な写本のなかで古いのは18C初頭のもののようである。しかし山崎闇斎の『会津風土記』序文からは17C半ばにはすでに幾つかが流通していたことが考えられる。
「総国風土記」は風土記の残篇として、「虫喰」「落丁」などが織り込まれた形で伝えられている。一つの国の全郡の記事がそろっているのは駿河のみとされる。しかし何らかの記事がある国は45に及ぶ。同一国・同一郡について内容の全く異なるものが存在する場合があり、しかもそれが(異本という形で)同じ写本のなかに併存していることもある。
 報告者は当面、下記の観点から「総国風土記」を分類することができるのではないかと考える:
・構成の形式:国単位で巻をなすものと郡単位で巻をなすものとがある。
・空間的単位:郷・荘(庄)・里・村などが明記されたものと、そうした単位名がついていないものとがある(後者の場合、『和名抄』郷名と一致するものも多いが、そうでないものも多い)。
・内容:大きくは貢租・物産・説話に分けられる。貢租記事は「公(土)穀○○仮粟○○貢○○」、物産記事は「土地○○民用○○出○○」という形式をとる。説話は地名・寺社の由来などである。特に前2者が混在することは少ない。
・表記:和風諡号と漢風諡号との違い
・書写奥書:鎌倉~南北朝期(元亨・文和・嘉慶)・戦国末~近世初(大永・弘治・天正・寛永・寛文)のものが多く共通に見られる。

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