日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 110
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東京大都市圏における持家取得者の住居移動
大規模アンケート調査による分析から
*佐藤 英人清水 千弘
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抄録

1.はじめに
 本発表の目的は、2000年以降の東京大都市圏における持家取得者による住居移動を分析することである。これまでの住居移動研究では、調査手法の限界やデータの不整備などにより、着地に焦点を定めた分析が多い。住居移動の着地となる新興住宅地を研究対象として住居移動のメカニズムを分析する既往研究はその好例と言えよう。しかし、ある期間にある空間内で発生する住居移動の全体像を俯瞰するためには、着地が固定される従来の研究のみでは十分とは言えない。そこで本研究では、持家取得を行った家主もしくは契約主を対象とした大規模アンケートの結果を用いて住居移動の発着地を同時にとらえ、近年の持家取得の特徴を住居移動の視点から分析する。

2.データ
 本発表では(株)リクルート住宅カンパニーが2000年8月以降、継続的に実施している「マイホーム購入者アンケート」のデータを用いた。アンケート調査の対象者は、2000年8月から2010年3月までに首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県の県南)に新居を購入し、売買契約もしくは工事請負契約を締結した20歳以上の買主もしくは契約主である。短期転売や賃貸目的の購入者を除く109,573名が分析対象者となる。なお、調査期間内に複数回新居を購入した場合は、初回購入分のみ分析対象となる。

3.結果
 住宅取得年齢が60歳以上の住居移動(対象者数は2,456名であり分析対象者全体の2.2%に相当)に注目し、彼らの前住地と現住地を比較すると、まず居住形態では「自己所有の一戸建住宅」から「新築マンション」へ転居した割合が最も高く、60歳以上の住居移動全体の29.8%(733名)を占めている。既往研究によれば、高齢者の住居移動は子どもの離化による家族人員の減少や加齢の伴う身体的な弱化等を契機としており、戸建住宅から老夫婦のみでも管理のしやすい集合住宅への転居が盛んであるという指摘に符合する。ただし、高齢者の住居移動は空間的に限られた範囲内で実施されていることがわかる。つぎに、前住地と現住地の緯度経度情報から移動距離を計測してみると、5km未満の短距離移動の割合が、全体の53.4%(1,282名)を占めており、郊外から都心へ向かう都心回帰のような長距離移動はごく少数にとどまる(図1)。このように高齢者の住居移動は住み慣れた土地での住み替えであり、たとえば、最寄駅からバス便を利用しなければならない利便性の低い戸建住宅から、最寄駅から至近の集合住宅へ移り住み、高齢者としての住環境を改善させる狙いがあると推察される。

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