日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 203
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スペイン・カタルーニャ自治州における新たな景観政策の実践
カタルーニャ景観観測院の取り組みを中心に
*齊藤 由香
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抄録

ヨーロッパ景観条約の理念
 2000年10月,ヨーロッパの景観に関する初の国際条約として締結されたヨーロッパ景観条約(The European Landscape Convention)は,従来の景観政策のあり方に大きな転換をもたらすものであった。すなわち,景勝地や文化遺産など一部の傑出した景観を限定的に保護するのではなく,ヨーロッパの国土全体の景観保全を目的とすること,自然景観/文化景観,都市景観/農村景観といった区別をすることなく,景観を一定のまとまりをもった領域として一元的にとらえること,そして景観を単に保護するだけではなく,国土計画の観点から開発・整備することが,その基本理念として掲げられている。
本報告では,こうしたヨーロッパ景観条約の理念をいち早く取り入れたスペイン・カタルーニャ自治州を事例に,その景観政策に関する先駆的な取り組みについて,景観観測院による景観目録作成の試みに注目して明らかにする。

カタルーニャ自治州の景観政策
 カタルーニャ自治州は,景観に関する国の施策に先駆けて,2005年6月「景観保護・管理・整備法(Llei de protecció, gestió i ordenació del paisatge)」を制定し,独自の景観政策を推進している。ヨーロッパ景観条約の理念を継承する同法は,カタルーニャの全領域を対象とし,美しい景観に限らず,平凡な景観,ありふれた景観,荒廃した景観など,あらゆるタイプの景観の整備を図るものである。そして,景観に関する施策を地域計画や都市計画などに反映させていくことが,同法の主たる目的であり,そのための手法として考案されたのが景観目録(Catàlegs de paisatge)である。景観目録の作成は,カタルーニャ自治州の景観行政の顧問機関として設置された景観観測院(Observatori del Paisatge)に委ねられている。

景観目録の作成
 景観目録とは,特定の価値をもった景観のみを収めたカタログではない。これは,カタルーニャ全土に展開する多様な景観を把握し,地域計画の視点からこれを保全・整備するための基礎資料である。その作成にあたっては,カタルーニャの国土をくまなく網羅するため,州域が135の景観単位に分割され,これを基本単位として景観の現状分析や評価が行われている。さらに,景観単位ごとに「景観の質に関する目標」が策定され,最終的にはこれが景観要綱として地域計画に組み込まれることになる。景観単位の領域は行政区分とは一致せず(下図参照),地形,気候などの自然的要素や土地利用等によって定義されている。景観単位の画定基準やその手法については,本報告のなかで紹介する。

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