日本地理学会発表要旨集
2010年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 204
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宮城県石巻市田代島における猫ブームにともなう観光発展
*白柳 かさね
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抄録

研究目的
 動物が地域資源としての役割を果たしている地域から、人と動物の地域的な共存の在り方を模索する。

研究対象地
 宮城県石巻市に属する田代島は、島の人口94人に対し、野良猫が約100匹生息するといわれる、野良猫の多い島である。さらに、島には猫を大漁の神様として祭った「猫神社」があったり、犬を上陸させてはならないというルールがあったりすることで、「猫を大切にする島」とされている。各メディアでは、田代島に「猫の島」「猫の楽園」などのキャッチコピーを付け、「数多くの猫が幸せに暮らす島」というイメージを伝えている。また、メディアへの露出をきっかけに、近年多くの観光客が田代島を訪れている。そのため、田代島は野良猫が地域資源・観光資源となって集客効果を挙げている稀有な事例であるといえる。

田代島の観光発展
 田代島の属する石巻市は、漫画家石ノ森章太郎のゆかりの地であることから、市によってマンガを生かした地域づくりがされている。その一環として、田代島ではマンガアイランド構想のもとに漫画に関する施設が作られ観光資源とされてきた。また、地域活性化を目指すNPOによって、漫画や自然といった観光資源に加えて、猫の島という要素もホームページやパンフレットに掲載されていたが、猫を観光のメインとするものではなかった。ところが、島に移住した民宿経営者のブログで、島の生活の様子とともに島に暮らす猫達の様子が伝えられた影響で、猫を目当てに訪れる客が増えたという。その後メディアに取り上げられることによって、観光客数が大幅に増加した。

観光客の実態
 2010年5月の連休に観光客に対して実施したアンケートによると、87%の観光客が猫を目的に来島していた。さらに、そのうちの94%は今回が初めての来島であり、今の段階では安定的に観光客を獲得しているとはいえない。来島のきっかけとしては、57%の観光客がメディアをきっかけとして田代島を知っており、中でも特にテレビの影響力が大きい。次いで、人から聞いて知った(口コミ)という人が25%を占めている。
 しかし田代島には観光客が飲食できる店舗がなく、土産物の品数も限られていることから、観光客が消費行動をとる機会が極端に少なくなっている。そのため観光客による島への経済的効果はなく、島の利益を生まないと同時に観光客の消費欲をも満たせていない。

田代島観光の持続性
 田代島に猫を目当てに訪れる観光客のほとんどが初の来島であることから、現時点ではまだ、田代島の存在自体が認識され始めている段階である。また、メディアによる集客への影響が大きいことから、今後メディアへの露出が減少した場合、来島者数の減少が予想される。一方で、口コミが集客効果の一部分を担っていることから、メディアの露出が減少しても、既に来島経験のある観光客によってある程度の情報発信が行われる可能性があり、猫ブーム最盛期後も、以前よりは多くの来島者が維持されると考える。そのため、観光客向けのハード面の強化について、今後検討する意義がある。

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