抄録
昨年改正された自然公園法では、その目的条項に生物多様性保全が明記された。これに付随し、国立公園の公園計画に生態系修復事業が盛り込まれ、これまでの利用を中心とした国立公園管理から生物多様性の保全へと大きく方向転換を図ったことは、評価できよう。しかし実際には、国立公園の利用に関する要望は大きく、自然保護が進んでいるとは言いがたい状況が続いている。
本報告では日本の自然保護発祥の地と言われる尾瀬国立公園と、世界遺産登録を目指す小笠原諸島国立公園を事例に、自然公園が抱える問題点を指摘し、その上で自然保護問題に果たすべき地理学の役割について話題提供する事を目的とする。