抄録
1.研究目的
岐阜県多治見市は,関東平野の熊谷市と並び称される猛暑出現地域である。多治見市は,濃尾平野北東部に位置する盆地的要素を持つ人口約11万人の窯業が盛んな小都市であるが,2007年8月16日には熊谷市と並んで最高気温が40.9℃に達した。そこで,その原因について調査,解析してみた。
2.調査および解析方法
まず,多治見市が猛暑となる日の総観場を分類し,猛暑日(35℃以上)の上層気圧場,および伊勢湾岸地域における風の流れ場解析を行った。さらに,多治見市内のヒートアイランドの移動観測,およびデータロガーによる定点観測を実施した。
3.結 果
伊勢湾岸地域の北東部に位置する岐阜県多治見市は,近年,猛暑日(35℃以上)の出現日数が増加傾向を示し,他の大都市を上回る場合も少なくない(図1・2)。猛暑が現れる日の上層気圧場は南アジア高気圧が北東シフトしており(図5)。東アジアでは南高北低型の気圧配置となる(図2)。この気圧場における伊勢湾岸地域では,南西の風によるフェーン現象を伴うことが多く,名古屋市を通って庄内川上流の多治見に高温域を運び込む役目を果たしている。多治見のヒートアイランド分布の特徴は,盆地底部の中心市街地を中心に同心円状に高温域が現れ(図4),周辺部との気温差(ヒートアイランド強度)は5℃であった。したがって,多治見の猛暑原因は,フェーン現象による名古屋市から移流してきた高温域の停滞と盆地的要素を持つ地形がヒートアイランドを助長させているためであろう。