抄録
雲出川中流には霞堤が6ヶ所あり、霞堤背後は洪水時に冠水し下流への洪水流量は一時的に低減する。洪水後には堤内地の洪水は自然排水される。雲出川中流の遊水地内の土地利用は水田、畑が主であり人的被害はない。雲出川での遊水地は位置づけが不明瞭であったが、近年では農業地域から宅地に土地利用が変容し浸水被害が社会問題となってきた。6開口部は、1)赤川(雲出川と中村川合流部、畑・水田利用。赤川北側に自然堤防があり集落が立地)、2)其村(赤川より上流側、波瀬川と雲出川合流地点)、3)中川原(長野川の合流部直下、二重堤の霞堤)、4)庄田(広い開口部、土地利用は水田と畑)、5)牧(周囲の堤に比べ2~3m低い)、6)小戸木(牧からの洪水流を排水)である。遊水地浸水深度別に下流平野の土地利用分類別の被災状況を計算してみた。下流平野は宅地、果樹園ほかに、工場地帯があり、遊水地での貯留がなされない場合には下流平野へのインパクトが大きいことが示された。