日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P728
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自己組織化マップを用いた日本域の夏季における異常気象パターンの抽出
*大庭 雅道野原 大輔吉田 義勝
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抄録

温暖化により頻発化が懸念される異常気象・極端現象は、今後の適応策を考えていく上での主要関心事の一つである。日本域の異常気象はアジア域周辺の様々な大気海洋現象によって引き起こされる。これらの現象の温暖化に伴う長期的な変化と日本域の異常気象に与える影響は未解明であり、温暖化の適応策を検討する上での不確実要素となっている。複雑な挙動を示す日本域の異常気象の長期的な変化傾向を把握し、気候モデルによる温暖化予測の結果から異常気象の変化に関する情報を抽出するための新たな手法が必要である。そこで、パターン分類手法の一種である「自己組織化マップ」を導入することによって、日本域の夏季における過去の異常気象のパターン分類を行うと共に、その変化傾向を調べた。自己組織化マップは、様々な多変量データを予備知識なしに組織的に分類することができる非線形解析手法であり、異常気象の卓越パターンを既存の統計解析手法よりも的確に抽出できる可能性がある。本研究では、日本域夏季の気候場(外向き長波放射量偏差、気圧面高度場)に自己組織化マップを適用し、更にクラスター分析により分類結果をグループ化した。この結果、猛暑や冷夏、および梅雨前線の強弱に関連したパターンを抽出できた。さらに、分類された気候パターンの遷移を追跡することで、代表的な猛暑や冷夏時の気候場の挙動を視覚的に把握することができ、異常気象の発生状況の把握と要因の解釈において、自己組織化マップの有効性が示された。各パターンの長期の変化傾向を調べた結果、猛暑型や冷夏型の出現頻度と日本の夏季の平均気温との間に相関が見られた。猛暑型は解析対象期間の32年間(1979~2010年)で増加傾向にあり、前半に比べて後半では出現頻度が約1.5倍に増加していた。一方、冷夏型は約半数に減少していた。

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