日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 420
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2011年2月クライストチャーチ地震による建物被害と発生要因
*植村 善博
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抄録
2011年2月22日(火)クライストチャーチ市はM=6.3の地震に襲われた。この2月地震は震央が市南方約10kmと近く震源が地下約5kmと浅いこと,発生時刻が昼食時間帯にあたったことから,市内全域で多数の犠牲者や建物,インフラなどに深刻な被害が発生した。建物被害の実態とその発生要因を把握するために市域全域において調査を実施した。その結果,建物被害が地震断層の位置,地形条件および建物素材により支配されていることが明らかになった。 1)調査地域として,CBD,Riccarton Woolston, Redcliffs, NewBrighton, Mt Pleasant, Lytteltonの7地区を選んだ。前4地区はエイボン川とヒースコーテ川の沖積低地に位置し,後2者は地震断層上盤の基盤岩上に,NewBrighton,は海岸砂州に位置している。調査は建物被害と建築材料および地形との関係を中心におこなった。特に,市役所調査員により掲示された赤,黄,?高フ被害判定を採用した。被災指数は赤1,黄0.5,緑0として全調査数で除して100倍する宮村(1946)の方法により求めた。2)調査対象7地区における485の調査件数中,187件が被災しており被災率は39%である。このうち,赤は22%,黄16%,を占め,全体の被災指数は30であった。クライストチャーチ市域ではMM震度?\~?]に達したことは確実である。建物素材別の被害では,レンガ建築が被災指数50を示し,木造20,コンクリート21に比べて約2倍以上の高い値を示す。レンガ建築は赤指定が44%を占め,構造的に弱いレンガに深刻な被害が集中発生している。3)地震断層上盤に位置するPort Hill上のSt AndrewsおよびLytteltonでは被災指数が52および49と高く,かつレンガ建築の赤指定は41%および38%と極めて深刻である。基盤岩から直接強い揺れが伝播したと考えられる。一方,Port Hill北側低地のWoolstonとRedcliffsでは被災指数は21と6,赤指定は20%と1%であった。ここでは被害程度が丘陵地区の半分以下と低い。4)CBD地区西部では被災指数は27で赤指定が20%を占める。レンガの赤指定は47%と高く,コンクリートの赤指定20%,木造では15%に達しており,北側低地より被害程度は大きい。この原因として,地震断層の地表投影位置がCBD地区を東西に横断すること,耐震性の低い古い建物が多数分布していたことが考えられる。
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