日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 103
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小学校地理教育向けアプリケーションの開発とその効果
*湯田 ミノリ伊藤 悟
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抄録
2011年から本格的に導入された新しい学習指導要領では,小学校3・4年生で,日本の都道府県名を覚える項目が社会科で登場する.また小学校4年で平面図形の理解や認知ができるようになることが目標とされている.そこで,本研究では,図形認知の能力を養いながら,日本列島上における各都道府県の名称と形,位置を理解できるようになること,つまり空間概念や空間表現といった部分の空間的思考の向上を目標とした地図パズルゲームアプリケーションの開発を行い,その効果をみた.
このアプリケーションは,コンピュータの利用制限の厳しい小学校での利用を考え,Flashを使って作成した.開発したアプリケーションには2種類ある.一つはそれぞれの都道府県の形がピースになっている単純なものであり,もう一つは各ピースをクリックすると,その都道府県名が現れるものである.ゲームはすべてのピースがはまった時点で終了するが,実験用に途中でも5分間で自動的にパズルが終了するようした.
調査は,滋賀県草津市立老上小学校4年生28人を対象とし,2010年11月に3週間行った. 毎週1回,それぞれのアプリケーションを5分間やってもらい,ゲームの正解数と時間の変化,このゲームの導入前後での,白地図を用いた都道府県名テストの正解数,都道府県を地図上でどのように探すか,空間的思考能力および地図に対する態度の変化を見るために,アンケート調査を行った.なお,1回目は練習としてかたちパズルのみを行ったため,児童たちはかたちパズルを計4回,都道府県パズルを計3回行った.
週に1度,5分間という短い時間ではあるが,子どもたちは集中してパズルに取り組み,たった3週間でほとんど全員の子どもが全てのパズルを解けるようになった上に,都道府県の名前を見ると,日本列島上の位置をイメージできるようになった.これは,当初,パズルで同じ形を探していた段階から,都道府県という文字で書かれた位置情報とその形と地図上の位置が頭の中で結びついたためと考えられる. 本研究で開発したパズルゲームのアプリケーションは,空間的思考能力を涵養するとともに,地図や日本,世界にも関心が広がっていったという点で,小学校の地理教育の有効な教材となりえるという結果が得られたと言えよう.
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