抄録
阿蘇ジオパークは,2009年に日本ジオパークに認定され,現在世界ジオパークを目指して整備を進めている.阿蘇ジオパークの大きな特徴は,世界有数の巨大なカルデラと中央火口丘群がつくる壮大な火山の地形・地質,およびそこに暮らす人々が作り出した独特の歴史と文化である.
多くのすぐれたジオサイトの中でひときわ目立つ要素として,中岳の火口と草原景観があげられる.中岳火口は,火口縁までケーブルカーと有料道路が整備されており,活動が比較的に穏やかな時期には,観光客が火口内を直接覗くことができるきわめて珍しい場所である.草原は,中央火口丘群の地域を始め,カルデラの外輪山の外側にまで広がり,独特の景観をつくっている.これらの草原は,人々が長年放牧,採草,野焼きを行うことで維持してきた半自然景観である.さらに,火の神を祭る阿蘇神社や国の重要無形民俗文化財に指定されている農耕祭事も重要な要素である.
阿蘇ジオパークでは,各種案内板(サイン)の整備をはじめ,ジオサイトの整備,ジオツアーの開発・実施,ジオガイドの養成などに取り組んでいる.その中で,とくに,昨年度末からは「ジオガイド」の養成に力を入れている.阿蘇地域では従来からエコツアーが実施され,ツーリストの受け入れ態勢も整備されてきている.しかし,阿蘇地域がジオパークとして充実した活動を展開するためには,“ジオ”の要素(地球の営みによる遺産)を十分に理解し,そこから派生する様々なストーリーをジオと絡めながら説明ができる優れたジオガイドが必要である.
今年3月から開講している「ジオガイド養成講座」では,毎週土曜日に1回につき2時間の座学を13回実施した.また,地形と地質の関係や地層や火山噴出物の見方などについてフィールドワークを2日間(終日)行った.受講者は38名に上り,大変熱心に取り組んでいた.最終的には試験を実施し,一定以上のレベルがあると認めた受講者を「阿蘇ジオガイド」として認定する予定である. 阿蘇ジオパークとして,今後,世界に認められるレベルを目指して,様々な活動を充実させていきたい.