抄録
1.はじめに
ジオパークで推進する観光事業「ジオツーリズム」は、大地や地球の成り立ちと、人々の歴史や文化との間に生まれたドラマを、観光客が楽しく正しく理解・体験できるかどうかが1つのポイントになる。今回は、大地の遺産の価値を活用した地域振興を行う上で必要不可欠な地域住民の役割と、地域住民をジオパークの取り組みに参画させるための取り組み事例を紹介する。
2.ジオパークの主役は地域住民
大地の遺産を観光資源化するためには、様々な戦略や働きかけが必要である。たとえば、顧客の発地である大都市の旅行会社への営業活動や、ステージイベントへの参加等を通じて、ジオパークに対する“誤解”を解きほぐす必要がある。一方、発地の誘客に成功し、たくさんの観光客がジオパークに訪れても、着地での受け入れ態勢が不十分では高い顧客満足度は得られない。着地における優れた現地ガイドの養成はもちろんだが、ここで大事なのは、ジオパークを理解し、ジオ的視点で地域の魅力を積極的に外部に発信する地域住民の姿勢である。
3.役割分担の重要性
ジオパークの事業は多岐にわたるため、行政機関だけでなく、様々な組織からのサポートが必要となる。観光面でいえば、行政と地元企業の役割分担が事業推進の1つのキーポイントとなる。例えば、ジオパークのロゴマークやキャラクターの選定や、それらを用いた歓迎看板の設置等の整備は行政の役目である。一方、行政が誘客した観光客をもてなし、ジオパークのロゴマークやキャラクターを活用して金もうけをするのが、地元企業の主な役目である。「ジオパークの認定を活かすも殺すも地元次第」という地元企業の理解こそが、ジオパークを活用した持続可能な地域振興の実現に繋がる。
4.地元企業をジオパークに参画させる方策
観光地である島原半島は、ジオパークの世界認定に対する地元企業の関心があまり高くない。この課題を克服するために、島原半島ジオパークでは今年の夏に「島原半島サマーキャンペーン」を実施した。これは、半島内の観光施設およびホテル・旅館約80箇所で、観光客を対象としたアンケートを実施したものである。アンケート結果を協力した地元企業にフィードバックすれば、各企業が独自に観光戦略を立てる事が可能となる。今回のキャンペーンの実施が、地元企業をジオパークの活動に巻き込むきっかけになれば、と考えている。