日本地理学会発表要旨集
2011年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 508
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地方都市における公共交通事業と住民の利用実態
伊予鉄道を事例に
*上崎 貴仁
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抄録
近年、わが国の地方都市においては、公共交通の旅客輸送量減少に歯止めがかからない状況にある。これは、自動車保有の一般化やそれに伴うロードサイドショップの対等などに主因と考えられている。しかしながら、公共交通機関は住民の足として必要不可欠な存在であり、今後の高齢化による移動制約者の増加と言う点を考慮すると、公共交通機関の役割は今後増すものと考えられる。
本発表では、昨今の公共交通事業全般の動向などを瞥見する。その上で、公共交通利用者数減少に対して早い段階から危機意識を持ち、積極的に利用促進策を展開したことにより利用者減少に歯止めをかけ、利用者の増加に成功している伊予鉄道を事例に調査し、現状と課題を考察する。このような事をふまえて、地方都市における今後の公共交通機関の在り方について考察を行う。
伊予鉄道は、松山市を拠点として、周辺地域に軌道・鉄道・バスの運輸事業を軸とした多角的経営を行っている事業者である。伊予鉄道は全国の状況に等しく、鉄道が昭和49年、バスが昭和44年、軌道が昭和39年をピークに旅客輸送量が減少に転じており、輸送人員は昭和50年度の約7000万人が、平成12年度には約2380万人にまで減少していた。しかしながら、事業者が主体となって積極的な事業展開を行った結果、平成20年度の輸送人員では、約2760万人にまで回復している。
調査の結果、鉄道、軌道、バスいずれの交通機関においても、週に2回以上利用する日常的な利用者は全体の1割程度であり、月に2、3回程度利用する周期的な利用者においても半数に満たない結果となった。利用目的においての回答では「買い物」や「遊びに出かける」などが多く、日常的な交通手段として認識されていないことが明らかとなった。これは、通勤などで日常的な利用が見込める属性に絞ったうえでも同様の傾向を示しており、松山市民においての公共交通機関の認識が明らかとなった。 また、新設路線である「電車連絡バス」の沿線エリアでは、施策前と比較して「便利になった」という回答が他のエリアよりも15%ほど高い結果を示しており、電車連絡バス導入による利便性向上効果は高いものと考えられる。
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© 2011 公益社団法人 日本地理学会
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