抄録
日本の地方自治体は,現在,厳しい財政状況に置かれている.地方自治体の中でも,市民生活に直接かかわる業務を行う市町村の2011 年度における財源不足は,社会保障関係費の自然増や高水準な公債費等により,約14 兆円に達している.この市町村の安定的な基幹税として,固定資産税がある.固定資産税は,どの市町村にも広く存在する固定資産を課税客体としており,全市町村の税収の約43%を占めている.固定資産税は土地,家屋,償却資産の所有者に価格に応じて課税される市町村税である.その中でも,土地の価格算定は,市町村内に存在するすべての土地の地価変動を反映して,適正に価格決定しなければならず,市町村にとって作業負担が大きい.特に街路系統性は客観的な定量的測定が困難である.このため,本項目はこれまで経験則的な基準により要因取得がされてきたため,GISを用いた要因取得は困難であった.また,要因の正当性について,住民への説明責任を十分に果たせなかった.そこで本研究では,固定資産税の土地価格を適正に算定するために,地価形成要因の1つである街路系統性を客観的に取得するための方法を,京都府宇治市の固定資産税路線価を対象として検討した.具体的には,街路系統性を示す要因をネットワークトポロジの概念により分類し,客観的な定量的測定を試みた.その結果,固定資産税路線価にかかる街路系統性を客観的な要因により分類することができた.