抄録
日本学術会議は、2011年、現行の高校地理歴史科教育に関する抜本的な改革として「新しい高校地理・歴史教育の創造―グローバル化に対応した時空間認識の育成―」を提言した。その中で、「地理基礎」、「歴史基礎」の新設科目各2単位の必修化を提言している。この提言は、2006年に高等学校で表面化した「世界史未履修問題」の解決策を、時間認識と空間認識のバランスのとれた教育を重視する立場から5年間にわたり検討したものである。本発表は、この提言作成の経緯や内容について地歴科教育改革の視点からまとめたものである。
「地理基礎」、「歴史基礎」科目新設の背景には、時間的空間的思考力の育成の視点が、新設科目作成の根底にあり、分科会設置当初からの合意事項であった。 当初、地歴統合も審議されたが、地理教育が自然を含む文理融合の科目で、地理学と歴史学の学会コミュニティが独立しており、ESD教育(持続発展教育)を重視する地理教育と歴史教育ではかなりの質的相違があること、また、歴史教育においては、日本史と世界史統合の重要性が委員会設置の初期段階から指摘され、地歴統合科目で2単位では、内容的に不十分になることなどが指摘されていた。 必修2科目4単位の新設には、地理学だけでなく、歴史学からも将来の地歴科教育において、最適とされたのである。 しかし、新設2科目必修化には時間を要するため、長期的改革と短期的改革の2種類が提言された。短期的改革とは、地理、世界史、日本史の独自性を尊重しながらも科目間相互乗り入れをすることであった。長期的改革の「歴史基礎」では、詰込み型の歴史教育の思考力育成型へのシフトや「地理基礎」においても「地理A」をベースに地図/GISを活用した主題学習や探究型学習を通して、地理的スキルと防災・地域づくり力など地域社会参画能力の育成も重視された。しかし、現行の地歴科教育の履修において、最低必履修単位が現行の世界史A2単位から4単位に増加する問題点があり、地歴統合科目2単位の選択も残された。 しかし、提言の重点は、「新しい高校地理・歴史教育の創造」であるため、地理基礎・歴史基礎の必修2科目4単位の実現を目指したのである。