抄録
ドイツの「風の道」計画は,冷気流を市内に誘導し,都市にたまった大気汚染物質を吹き飛ばすための政策として実施されてきた(一ノ瀬,1933).この風は同時に熱も拡散させるほか,冷気として,都市内に移流してくるため,ヒートアイランドを緩和する効果としても期待されている(Weber and Kuttler,2004).しかし,国内での山風の事例は数少なく,現在十分に研究されていない.今後,山風を利用した都市の熱環境の緩和策を検討するためにも,山風の気象学的・気候学的特性を把握する必要がある.そこで,本研究では長野県長野市の浅川地域における山風の研究を従来の定点観測に加え,超音波風向風速計と気圧計を用いた風,気温及び気圧の自動車による移動観測と領域気象モデルWRFによる数値シミュレーションにより、山風の吹送過程とその冷却範囲を明らかにする研究を行っている.本要旨ではWRFによる予備的数値シミュレーションの概要を報告し,大会当日は観測成果も発表する