1998年に飛騨山脈南部で群発地震が発生した。この地震の活動域の一つは上高地付近にあり、その震源は割谷山~明神の範囲で東西に帯状の集中域を示した。本研究ではこの地震の震源集中域に推定される活断層の確認調査を行った。
上高地地域の、田代橋~明神の南北に存在する山域の斜面を中心に、野外調査を行った。その結果、善六沢、玄文沢及び外ヶ谷上流において、第四紀滝谷花崗閃緑岩を切る複数の断層露頭が確認された。滝谷花崗閃緑岩は140万年前に固結しており(原山ほか2003)、これらの断層は第四紀に活動した活断層であることがいえる。断層の走向の多くが東西系であり、傾斜は60~90°と高角で、しばしば断層粘土を伴う。また六百沢ではカタクレーサイトが、奥六百沢では断層破砕帯に生じた崩壊地形が確認された。
更に,梓川を挟んで南北両岸の斜面において,槍穂高カルデラ東縁を追跡した結果,右岸における境界は左岸における境界よりも約1km東にずれているのが確認できた。本活断層は右横ずれ断層であることが考えられる。