抄録
近年,比較的人口規模の大きい都市圏において都心回帰が観察されているが,県庁所在地以下の規模の都市圏においては都心回帰に関する報告がほとんどみられない。本研究では北海道を対象地域とし,中小の地方都市を中心とした都市圏の人口分布変化,および都市圏内における中心地の人口圧力の推移について,人口ポテンシャルに基づいた指標により評価を行った。都市圏の中心地と圏域は,DID(人口集中地区)および国土数値情報による都市地域から設定し,基準地域メッシュ単位で分析を行った。その結果,札幌圏を除く大半の中心地において,1970年から2005年にかけて人口ポテンシャルは大幅な低下がみられた。また,圏域内における中心地の相対的な人口ポテンシャルも全体として大幅な低下がみられ,各中心地の衰退が観察されたが,人口減少率が高い都市圏域においては比較的人口が中心地に集中する傾向が認められた。さらに65歳以上の高齢者については,人口減少率が高い都市圏域を中心として総人口以上に中心地への集中傾向が認められた。本研究で算出した値は,任意の都市圏における都心回帰の程度を定量的に把握することが可能な指標であると捉えられると同時に,観察された動きは,今後多くの都市圏人口が縮小に向かうなかでの地域計画に対して示唆的な役割を果たすと考える。