日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 601
会議情報

発表要旨
モンゴル北部永久凍土域のカラマツ林における生物季節と熱・炭素収支
*宮崎 真石川 守バータービレグ ナチンダムディンスレン ソドブジャンバルジャブ ヤムヒン
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
1.はじめに
モンゴルはシベリアから続くタイガ林の南限に位置している。モンゴルの森林面積は国土の約7%を占めており、その約80%はカラマツ林である。モンゴルでは森林は地下に永久凍土がある北向き斜面に主に分布し、永久凍土がない南向き斜面には草原が主に分布している。 2010年よりモンゴル北部永久凍土域のカラマツ林において水文気象・生態・年輪年代の長期モニタリングを開始した。本研究の目的は、モンゴル北部の永久凍土上のカラマツ林における熱・水・二酸化炭素の交換過程とその動態を複数のアプローチから総合的に明らかにすることである。本稿では、観測から得られた熱・炭素収支と生物季節の関係を示す。
2.観測方法とデータ
観測サイトはモンゴルトゥブ県バツンブル郡ウドレグ村(48°15’43.7’’N, 106°50’56.6”E, 標高1264m)のモンゴル国立大学研究林内のカラマツ林にある。気温・相対湿度(2高度:25m, 2m)、気圧、風向風速、降水量、積雪深、短波・長波・光合成有効放射量、地温、土壌水分量と熱・炭素収支を計測している。樹木の胸高直径の成長量(デンドロメーター)、樹液流量(グラニエ法)、定点カメラによる植生および地表面状態を測定している。
3.結果
年平均気温は-1℃で、年較差は約60℃(日平均気温が6・7月に+25℃~27℃、12月に―30℃)であった。年降水量は約250mmで、5月から9月の降水量が年降水量の約90%を占めていた。地温は深さ3m以下では一年中―0.2℃程度で季節変化が無く、永久凍土となっていることが分かった。定点カメラ写真及びPARアルベードから地表面状態とカラマツ林の生物季節が明らかとなった。1月~4月上旬と11月~12月は地表面に積雪があり、5月下旬にカラマツの葉が展葉したのち、葉の成長の最盛期を7月に迎え、10月上旬に落葉していた。深さ10cmの土壌水分量は、1月~4月は約10%以下であったが、降水の季節変化と対応して増加し、5~8月までの間は約20%と高い値であったが、10月から減少し11月~12月は約10%以下であった。6月中旬~9月上旬は顕熱(H)<潜熱(LE:蒸発散量)となっていたが、それ以外の期間はH>LEであった。6月上旬~9月下旬は二酸化炭素フラックスが負(吸収)で、それ以外の期間が正(とくに春季に大きな正(放出)となっていた。このカラマツ林における熱・炭素フラックスの季節変化は土壌水分量や積雪などの地表面状態とカラマツの展葉・生長・落葉等の生物季節と密接な関係があることが明らかとなった。
著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top