抄録
1. 目的・調査方法 本研究では、ネパール南部のテライ低地ナワルパラシの農村集落における水利用の特色、利用上の問題、ヒ素汚染の実態を把握するため、住民の水利用(井戸)の調査を実施した。調査方法は、飲用水、生活用水の井戸水利用に関する地域的特色および問題とその対策、生活と水利用の関係を把握するため、地域内の25のワード(集落)において、水利用状況の住民アンケート調査と複数の井戸での聞き取り調査および生活状況の調査を行った。2. 調査地域 調査地域は、テライ低地のナワルパラシNawalparasi郡パラシParasiの東西約6km、南北約10kmの水田を主とした農業地帯であり、ここには約31ワード(集落)が分布し、その中の25のワードを対象とした。3.調査概要 おもな調査の実施内容は、以下の通りである。 (1)アンケート調査 住民アンケート調査は、調査対象地域の各ワードを訪問し、聞き取り形式による井戸水利用の住民アンケート調査を行った。調査地域は25ワード(集落)、回収アンケート数は117件(人)であった。アンケート調査は、ネパール語に翻訳したアンケート用紙により、ネパール人スタッフ3名を同行して行った。今後は、回収アンケート内容を集計整理し、利用状況について検証する。(2)井戸利用実態調査 各井戸の概要と利用状況把握のための聞き取り調査は、各井戸地点の状況調査と各井戸の持ち主・利用者に対しての聞き取り調査を行った。調査箇所は25ヵ所(ワード)で井戸数100箇所について行った。利用されている井戸には、堀井戸(開放井)とポンプ(井戸)及び水道(地下水源)がある。主な聞き取り内容は、各井戸の深さ、井戸の掘削・設置年、利用目的(飲用かどうか)である。(3)生活状況調査 生活状況調査では、井戸調査と並行して各ワードにおける生活・文化の特色に関する聞き取りおよび現地での確認を行った。実態調査による地域の特色を概観すると、各ワード(集落)は農業が基幹産業であって自給的農業を営んでいる地域である。生業は、米作(雨季)を主とし、調査した乾季には小麦やサトウキビ、豆類、牧草などを栽培し、牛、水牛、ヤギ、鶏などの家畜飼育がほとんどの家でみられ、海外出稼ぎ労働もみられる。 なお、今後は、集落ごとの生活レベルの差、民族の違いと水利用、生活との関わり、ワード別の違い等井戸(地下水)の利用形態について検証する。