日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S1705
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発表要旨
近畿圏の活断層と原子力関連施設
*渡辺 満久
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抄録
 近畿地方は日本の中でも活断層の密度が高い地域であり、活断層が形成した特徴的な断層変位地形が見られる地域である。近畿圏の原子力発電所は、活断層が形成した特徴的な地形を利用するかのように、若狭湾沿岸に建設されてきた。若狭湾の原子力関連施設では、以下に述べるように、耐震性や土地のずれに対する問題を抱えている。本報告では、このような問題を個別サイトのものとして理解するのではなく、日本の原子力関連施設全体に共通するような、審査にまつわる問題として整理する。 敦賀原子力発電所の原子炉に近接する浦底断層が、長大な柳ケ瀬断層から連続する活断層であると評価されておらず、「揺れ」が過小評価されている可能性が高い。また、敷地内には、浦底断層から派生する活断層が確認されており、原子炉直下にも活断層が存在する可能性が高い。高速増殖炉もんじゅと美浜原子力発電所周辺では、白木-丹生断層が南北方向に通過している。また、これとは別に、NNE-SSW走向の活断層が存在する可能性がある。いずれの敷地内にも、粘土を挟む複数の断層が確認されており、最近の活動を否定しきれない。 大飯原子力発電所周辺でも、海域から陸域へ連続する活断層の長さが過小評価されている可能性がある。また、敷地内には、粘土を挟む複数の断層が認められ、一部は原子炉直下にある。F-6断層は、重要施設を横切る断層であるが、トレンチ調査結果を見る限り、活断層である可能性を否定することはできない。再調査を実施して、その安全性を確認する必要がある。 活断層の密度が高い若狭湾沿岸において、活断層は過小評価され、活断層あるいはその可能性がある断層の上に原子力関連施設が建設されている。これは、過去の安全審査が杜撰であったことを示している。「福島」の事故も、適切な想定を怠ったことによって発生した人為的な事故である。これまでの審査の責任を明確にしないと、誤った審査がこれからも続くことになろう。活断層の可能性が否定できない段階で、原子力関連施設を動かしてはならない。
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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