抄録
バングラディシュは、1億4740万人の人口を抱える世界最貧国である。1971年の国家独立以来、人々は仕事を求めて都市域へと移住し、都市ダッカでは年間約3.5%の割合で人口が増え続けている。2010年には、ダッカの人口は1,760万人となり、そのうち約60%の人々がスラムで生活をしている。本研究では、人口増加を続けるダッカのスラムに着目し、現地住民との聞き取りから、スラムでの生活や社会環境を明らかにした。現地調査はフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD)方式をとり、現地住民への聞き取りだけでなく、ディスカッションを交えたデータ収集を行った。調査項目は、生活用水や電気、ガスなどのライフラインの状況から、廃棄物の処理方法まで生活全般についてである。 現地調査より、ダッカにおけるスラム地区は、スラム全域において生活水準が低く、不衛生な生活環境下にあることが明らかとなった。政府からの十分な援助を受けていないため、生活用水は水質が悪く、伝染病が蔓延する可能性が高い。また、廃棄物の処理方法が確立されていないため、排泄物や生活排水が近隣の河川へと垂れ流しになっている。しかし、スラム地区の住民は衛生面や伝染病についての関心や認知度が低いため、今後このような状況を改善していくことが難しいだろう。このような地区では、政府の援助だけでなく生活環境改善へ向けた住民の教育が重要であると考えられる。