抄録
平成20年8月末豪雨は,8月26日から31日かけて日本の各地で局地的な大雨をもたらした.愛知県岡崎市では29日2時の前1時間降水量が146.5mmを記録し,バックビルディング型メソ対流系が大雨を降らせたとの報告があるが,その形成・維持メカニズムの解明には課題が残されている.本研究の目的は,愛知県岡崎市に大雨を降らせたメソ対流系の形成・維持メカニズムについて詳細に調べるために,領域気象モデルWRFを用いて時間的,空間的に高解像度な解析を行った. WRFモデルによる再現計算の結果,愛知県付近では,降水域の極大がほぼ東西に線状に広がりつつ,強まりながら北に移動する様子が見られ,現実場を比較的良く再現していた.相当温位を調べると下層では南東方向からの暖かく湿った空気が入り込み,中層では南西方向からの乾いた空気塊が断続的に入り込むことで対流不安定な場が維持されていた.今後は,水蒸気移流の影響を調べるために海水面温度を変えた感度実験を行う予定である.