抄録
東アジアのモンスーン気候地域においても,地球環境の変化の影響に地域差があり,それは顕著な気候状態時に明瞭に現れると考えられる。高温時には海風の出現を伴い,沿岸は昇温が抑制される一方,内陸で著しく昇温するため,地域差が増大する。日本列島周辺の環境変動の基本となる気候状態について,その広域的・局地的な相異および出現の要因について解明を試みる。 日本列島と朝鮮半島では,冬・春季事例では,暖気がおよそ北側あるいは西側から,南側あるいは東側へ移動し,秋季事例には暖気が南側あるいは東側から,北側あるいは西側に移動する傾向がみられた。高温出現の前後では,冬季事例ではシベリア高気圧の寒気,春季事例ではオホーツク海・日本海北部・黄海の高気圧の冷気,夏季事例では熱帯低気圧の暖気,秋季事例では帯状高気圧の暖気が明瞭である。 日本海側とは対照的に,太平洋側では海風時にも南から暖気がもたらされ,内陸での高温は顕著となる。また冬・春季に海陸風循環は日本海側で明瞭でないが,これは暖気が日本海側から太平洋側への移動に影響する。朝鮮半島南部も含めると高温域は,春季事例では日本海から太平洋あるいは西から東へ移動し,夏季の事例では太平洋から日本海あるいは東から西へ移動する傾向がみられる。