日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 327
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発表要旨
日本企業による中国法人設立の空間的変容
*杉野 弘明
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抄録
 本発表の目的は,1990年代以降いくつかの契機を経てドラスティックに結合関係を強めた日本と中国の関係に焦点を当て,日本企業の中国法人設立の動向から都市間の結合過程を分析し,東アジアにおける国際的な都市システムの変容過程の一端を明らかにすることである. 分析においては,東洋経済社発行の『海外進出企業総覧』各年版の「新規進出した現地法人一覧」を統合し,ベースデータとして使用した.これに加え,各社ウェブサイトなどから日本企業の本社所在地などの情報を追加し,日本企業の本社所在地を発地,中国法人本社所在地を着地とするOD行列を作成した.なお,本分析においては,新規に設立された中国法人数を発地着地の結合を強めた度合い,すなわち結合進展度として採用した.
 1993年から2010年にかけて3,726社の中国法人が日本企業によって設立された.日本側企業の本社についてみると,295都市が発地となっている.企業数では,東京が1,769社であり,大阪が460社,京都が113社とそれに次ぐ.一方,中国法人の本社所在地をみると,278都市が着地となっている.企業数では,最多の上海が1,125社であり,香港が426社,蘇州が252社,北京が247社で次ぐ.中国のWTO加盟を区切りとして,1993年から2001年(第I期)と2002年から2010年(第II期)に区分してみると,新規設立数に関して,東京,上海が2時期ともに首位である.両時期のプライマシィ指数をみると,東京は3.26から4.51に,上海は1.55から4.04と上昇している.一方,第I期で2位都市であった大阪,香港では,新規設立法人数は減少しており,東京,上海は第II期で首位性が高まった.
 都市間関係についてみると,1,019の結合がみられる.このうち,もっとも強まった結合は東京-上海で結合進展度は564である.一方で,結合進展度2が142,結合進展度1が702あり,多様性がみられた.これらは,主として東京・大阪-中国の非上位都市,日本の非上位都市-中国の上位都市の結合である.時間的変化を明らかにするために,第I期と第II期を比較すると,東京-上海では結合進展度が192から372に増大した.一方,香港と日本の各都市との結合の進展については,新規設立数が減少していることから鈍化しているといえる.
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© 2012 公益社団法人 日本地理学会
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