日本地理学会発表要旨集
2012年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 521
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発表要旨
「行政災害」―八ッ場ダム検証に見る国交省河川部門の不正報告について
*竹本 弘幸
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抄録

Ⅰ はじめに八ッ場ダム建設問題で実施された国交省(本省)・関東地方整備局(河川計画課)がまとめた検証報告書のうち,ダムの有効性と災害対策の視点から,裏付けとなる地形地質の基礎資料解析の妥当性の検討を行った.その結果,ダム建設に不都合な資料(堆砂量問題・災害履歴)の隠蔽・排除などの情報操作と思われる内容が数多く確認できた.
Ⅱ 情報操作と災害履歴の隠蔽・排除などの6つの問題点①      想定されるダム堆砂量(1750万t)の基礎データは,ダム運用中に活火山の浅間山・草津白根山が噴火しないことを大前提とし,草津白根山東縁の二河川(1つは二次支川)の堰堤堆砂量を運用解析に使用していること.② 八ッ場ダムへの最大土砂供給源:浅間山麓の河川・砂防データや過去の土砂災害履歴を運用解析で排除していること③ 八ッ場ダムの堆砂報告では,近傍類似ダムであまり確認できない【火山性黒ボク土】が流れ込むが,これは放水で流れるので,堆砂量評価は過大としている.しかし,浅間山南東の霧積ダム流域でも同じ【火山性黒ボク土】は分布しており,この記述は偽りである.ダムは想定の3倍以上で堆砂が進行している.④ 国交省の報告では,昭和6年の西埼玉地震に関する資料掲載をしているが,ダム予定地に活断層は存在せず地震の影響も少ないという関連のみである.しかし,この地震は,震源から遠い長野原町でも石垣の崩壊20箇所,山崩れ200箇所と突出して大きな被害を記録している(前橋測候所,1931).これは,同町が急峻な吾妻渓谷や地盤が脆弱な熱水変質帯と凝集力の乏しい山体崩壊物のOkDAが分布するためである.3.11.後の検証でこの事例を勘案すると,堆砂量の想定は,大きく上回ることから意図的に隠蔽されたと考えられる.⑤ 国交省タスクフォースは,3.11.の際,群馬県内の平井断層(総延長80kmの深谷断層の一部)上に並ぶ4つの貯水池被害(中村,2011)や堤防被害の報告を受けているが,西埼玉地震同様に災害の詳細について言及をしていない.⑥ 同タスクフォースは,草津白根山の噴火災害・ヒ素汚泥で満杯の品木ダムへ泥流が流下した場合や野積状態の土捨場の安全性確保についても,十分な検討を行っていない.5月末に,火山性地震の増加と熱変化があったことを考慮すれば,火山活動の監視と防災対策が急務のはずである.
Ⅲ 日本学術会議土木工学建築部門によるずさんな検証大熊(2011)は,国交省河川局がダムの必要性を示す資料として同部門会議に提出した八斗島上流での氾濫図(1970年利根川統合管理事務所作成を参照)が捏造だった可能性を指摘している.そこで,この可能性について地形図の点検・分類図の作成など独自の再検証を実施した結果,次の4点でも大熊氏の指摘したとおり,捏造が疑われる図であることが判明した.
Ⅳ 八ッ場ダムに伴う吾妻渓谷の被害想定
ダム湛水後に想定される土砂災害の進行は,水位を上下することで,OkDAは膨張と収縮・凍結と融解の繰り返しによる表層剥離と土砂流亡⇒柱状崩落・湖面津波⇒谷頭状ブロック崩壊へとつながり,OkDAで埋積された旧谷壁斜面(基盤岩)との間の地下水位を度々上下させれば⇒深層崩壊へとつながるだろう.
Ⅴ 八ッ場ダムは,砂防機能を低下させ災害を誘発するダム国交省によれば,八ッ場ダムは砂防機能まで持つとされている.しかし,OkDAが脆いため,地すべりと崩壊に伴いダム湖の埋積は急速に進むと考えられる.これは,下流域にとっても大規模土石流の準備層を蓄えるだけでなく,火山噴火が起これば,その被害はさらに拡大するものと考えられる.

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