日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 603
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発表要旨
スーダン領内におけるナイル川の中州に関する一考察
*上村 三郎濱田 浩美
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抄録
ナイル川は全長6,650kmの河川長を有する世界第1位の河川であり、流域面積は3,254,555km2である。ナイル川流域は大きく分けて白ナイル川と青ナイル川及びアトバラ川の3河川に分類され、上流からタンザニア、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、コンゴ民主共和国、南スーダン、ケニア、エチオピア、エリトリア、スーダン、エジプトの11ヶ国に流域を有する国際河川である。青ナイル川はエチオピアのタナ湖に源を発し、スーダンのハルツームで白ナイルと合流する。白ナイル川の水源はブルンジ南部のルヴィロンザ川とされており、この川はカゲラ川と合流しヴィクトリア湖に流入する。その後、白ナイル川はウガンダ、南スーダン、スーダンのハルツームで青ナイル川と合流する。 通常、河川は上流から下流にかけて、浸食、運搬、堆積作用により独自の地形を形成する。特に中洲や三角州は河川の下流域に発達しており、河川長の短い日本の河川ではこの傾向が特に顕著である。しかしながら、ナイル川には河口から2,000km以上の中流域に、数多くの中洲が分布している。
 2. 調査方法 ナイル川に数多く分布する中洲を調査するためには、Google Earthの利用が効果的である。本研究では、Google Earthでナイル川を、エジプト国境から南スーダン及びエチオピア国境まで往復し、衛星画像を調査した。また、本研究では、自然条件上の観点から「沖積層で形成された中洲」と「岩盤中洲」、土地利用上の観点から「集落+農地の中洲」、「農地のみの中洲」、「未開発の中洲」に分類し、その数を集計した。そして、数は少ないものの、実際に住民が居住している中洲である2島(Tuti島とGezira Aba島)を訪問し、その実態を調査した。 その結果、ナイル川本流には予想以上の中洲が点在していることが判明した。
3.
調査結果 表1には、今回の調査対象であるナイル川本流及び支流の区間距離と自然条件及び土地利用別に分類した中洲の調査結果を示した。各河川の調査区間に関して、ナイル川河口からスーダン最北端の都市であるワディ・ハルファまでは1,460km、同じく河口からハルツームまでは2,848kmとなっており、その区間距離は1,388kmに及んでいる。また、ナイル川本流と合流するアトバラ川からエチオピア国境まで720km、ハルツームからエチオピア国境の青ナイル川までは672km、ハルツームから南スーダン国境の白ナイル川までは496kmと、どの河川も日本の河川とは比較にならない程の河川延長を有している。 表1からも明らかなようにスーダン国内のナイル川流域には906ヵ所の中洲が存在している。しかも、その内の88%はハルツームから下流のナイル川本流に分布していた。自然条件による中洲の分類では、沖積層が418島、岩盤の中州が488島となっており、いずれもナイル川本流に集中している。また、青ナイル川には沖積層の中州が多い半面、白ナイル川では岩盤の中州が主体となっている。ナイル川最北端の支流であるアトバラ川には中洲の絶対数が少なくなっている。 一方で、中洲の土地利用を分析した結果、97ヵ所(全体の約11%)の中洲に集落と農地が形成されていることが判明した。集落を有する中州はナイル川本流に集中している他、白ナイル川とアトバラ川にも僅かながら存在している。これに対して青ナイル川によって形成された46島には全く住民が居住していない。また、ナイル川に形成されている中洲の52%(501島)は未開発であり、農地のみの中洲も34%(308島)となっている。このようにスーダン領内のナイル川には大小様々な中洲が形成されているものの、土砂運搬量の大きな青ナイル川とアトバラ川に大規模なダムが建設中であることから、今後の中洲の形成に大きな影響が出てくるものと考えられる。
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