日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 418
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発表要旨
環境配慮行動に対する環境教育の役割とその効果に関する考察
*新井 風音
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抄録
近年、地球温暖化や生物多様性など様々な地球環境問題に対する関心が高まっている。しかし、環境問題に対しての興味や関心はあっても、実際に環境に配慮した行動には結びついていない現状が、これまでの先行研究で報告されている。本研究は、異なる年齢層において、どのような環境教育が環境配慮行動を促進しうるのかを考察することを目的とする。
その方法として、これまで環境慮行動の規定要因として考えられていた指標に加え、環境に関する活動の参加度、幼少期の経験、環境教育も指標に加えたアンケートを作成し、高校生、大学生、中高年の3つの異なる年齢層の対象者に対し質問調査を実施した。 
その結果、環境配慮行動度は、高校生と大学生に比べ、中高年層で有意に高い結果となった。また、 環境配慮行動度の高かった中高年層は、環境に関する講演会やセミナーへの参加度も高い。、環境教育に関しては、教室外での野外学習(through)の機会は高校生、大学生、中高年層で差はみられないものの、環境問題そのもの(about)についての室内学習と、環境問題の解決に向けての室内学習(for)の機会は高校生、大学生のほうが中高年層よりも多い。つまり、高校生、大学生は環境問題に関しての室内教育を中高年層よりも多く受けているのにも関わらず、それが環境配慮行動につながっていないことが示唆された。さらに、高校生、大学生、中高年層の全ての年齢層において、環境配慮行動度が高い人は、環境問題の解決に向けて自分たちに何ができるかについて調べる形式の学習機会が多い。これらのことから、環境に関する活動への自主的な参加が環境慮行動を促すと考えられる。また、環境教育の内容については、環境問題そのものについて(about)よりも、環境問題の解決に向けた(for)ものの方が環境配慮行動につながりやすいことがわかった。この要因として、環境問題の解決に向けて自分たちに何ができるかについて調べる形式の学習では、「自分で調べる」という自主的な行動に加え、それを通して環境問題を身近なものとしてとらえる意識や自分の行動がどのように環境問題の解決につながるかの意識が喚起されることがある。これは、環境問題への身近さと自分の行動による環境問題の解決が想像できる意識が環境配慮行動度の高い中高年層で高いことからも明らかである。
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© 2013 公益社団法人 日本地理学会
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