抄録
1.はじめに<BR>
2011年死因順位の第1位悪性新生物,第2位心疾患は,2010年までと同じであったが,第3位と第4位は2010年までとは入れ替わり,第3位肺炎,第4位脳血管疾患となった。性別にみると,男性の死亡順位は2008年以降,第3位肺炎,第4位脳血管疾患であり,女性の死亡順位は2011年もそれ以前と同様に第3位脳血管疾患,第4位肺炎であった(厚生労働省:人口動態統計による)。<BR>
高齢になると,肺炎の死亡割合が増加する傾向があり, 肺炎の死亡順位は,年齢階級75~84歳第4位,85~94歳第3位である(2010年)。これらの年齢階級において性別にみると,やはり女性よりも男性の肺炎の死亡順位が高い。<BR>
高齢化の進行とともに,肺炎による死亡は,今後も増加すると予測される。本研究では,高齢者の肺炎の死亡率について,都道府県別死亡率の地域差,死亡率の季節変化を把握することを試みた。<BR>
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2.研究方法<BR>
使用した死亡数データは,平成21年(2009),22年(2010),23年(2011)人口動態統計(確定数)(厚生労働省)である。北島・太田(2011,2012a,b,2013)と同様に,年死亡率,各月死亡率は,1日当り,人口10万人対として算出した。死亡数の多い75~84歳,85~94歳年齢階級を対象とした。 人口は2010年国勢調査人口(日本人人口)(総務省統計局)を使用し,2010年とその前後の3年の死亡数平均値から死亡率を算出した。<BR>
2011年3月の東日本大震災の被災県における肺炎による死亡の状況について,3年間のデータから検討した。<BR>
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3.都道府県別75~84歳,85~94歳肺炎死亡率<BR>
都道府県別75~84歳肺炎死亡率(図1)と85~94歳肺炎死亡率(いずれも,総数,3年平均)には強い正相関がある(相関係数 r=0.895 p=0.000)。75~84歳死亡率順位と85~94歳死亡率順位の平均順位からみた,死亡率が高い,または,低い都道府県は次の通りである(第5位まで)。<BR>
死亡率高:大阪府,青森県,埼玉県,茨城県,栃木県<BR>
死亡率低:長野県,島根県,沖縄県,鳥取県,山梨県<BR>
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4.東日本大震災被災3県における肺炎死亡数<BR>
被災県における,震災が誘因と想定される病死の増加について,人口動態統計の死亡数から検討した。図2に宮城県の85~94歳肺炎死亡率の季節変化を示す。<BR>
「(2011年3月死亡数)/(2009年3月と2010年3月の平均死亡数)」は,宮城県(肺炎,総数;75~84歳2.07,85~94歳1.47)が,岩手県(1.16,1.33),福島県(1.13,1.29)よりも大きく。3県とも全国値(1.10,1.11)より大きかった。<BR>