日本地理学会発表要旨集
2013年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 226
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発表要旨
山地斜面におけるヤマザクラ群落の開花日の差異
2011年開花時期の観察事例
*飯田 義彦今西 純一森本 幸裕
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抄録
【はじめに】山地における生物季節は山地地域の生態系を把握する上で重要である。これまで山地の小気候学的な現象として斜面温暖帯や冷気流などが明らかになっているが,小気候学的な特性を反映すると考えられる生物季節の実態について把握した事例は少ない。本研究では,山地斜面に生育するヤマザクラ群落の開花日に着目し,地形条件による生物季節の差異を検討することを目的とする。【方法】 奈良県吉野町に所在する吉野山のヤマザクラ植栽地にて,地形条件の異なる6プロット合計171個体の開花日を把握した。観察期間は2011年3月29日(DOY88)~4月23日(DOY113)で,連日各個体を目視により開花状況を判定した。開花日は樹冠全体のうち花弁が開いた花が数輪以上ある状態の日とした。なお,統計解析にはR version 2.11.2を使用した。【結果と考察】「高城山」(標高680m付近:斜面上部),「大曲り」(標高520m付近:斜面上部),「五郎兵衛茶屋」(標高340m付近斜面中腹),「塔の尾」(標高340m付近:斜面中腹~上部),「ほおずき尾上」(標高310m付近:斜面上部),「ほおずき尾下」(標高230m付近:谷底)でそれぞれの群落の平均開花日(DOY:1月1日からの起算日)は,107.9 ,103.5 ,101.5 ,99.7 ,99.7 ,100.5であった。プロットごとの開花日の差異を検討するため統計的な検定を実施した。Bartlett検定により分散性の確認をしたところp値 = 0.058となった。等分散ではないことからKruskal-Wallis検定(ノンパラメトリック)を実施し,p値 < 0.001 を得た。続いて,TukeyHSDによって各プロットの差について多重比較を行った。その結果,有意水準0.05よりも大きいプロットの組み合わせは,「五郎兵衛茶屋‐ほおずき尾下」,「塔の尾‐ほおずき尾上」,「塔の尾‐ほおずき尾下」,「ほおずき尾上‐ほおずき尾下」であり,これらのプロット間では開花日の平均値に統計的に差がないことがわかった。開花日は標高が上がるにつれて全体的に遅くなる関係がみられる一方で,開花日のピークは「五郎兵衛茶屋」~「ほおずき尾下」にかけて出現日に差異がないと考えられる。
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