抄録
ネパール南部テライ低地においては、地下水のヒ素汚染が深刻な問題になっている。そこで、本研究グループでは、ナワルパラシ郡パラシにおいて、ヒ素汚染の実態把握や対策に関する研究の基礎資料とするため、気候調査を行なっている。その一環として、水利用や生活実態の評価、疾病予防、気候への適応等の評価を目的として、異なる建築構造の住居内で温熱環境調査を実施した。その結果、日中の室温はトタン屋根の家屋で、コンクリート、カワラ屋根の家屋より高く、その傾向は日射が多い日に顕著であった。その要因として、屋根素材の熱容量が関与しているものと推察された。またモンスーン季には、水分を全く含まないトタンと、水分を含むコンクリート、カワラとの差を反映したものと推察された(前報)。そこで、異なる建築構造の住居で屋根と壁の表面温度を測定し、室内気候との関係を解析した。さらにモンスーン季における降水の関与を試察した。今回はその結果を報告する。