抄録
筆者らは2013年春から研究グループを立ち上げ(水と人の地誌研究グループ)、地誌学的な視点の一般への普及の手段として、地誌学の視点から地域を総合的に理解する旅行ガイドブックを作成・出版することを目標に活動している(長谷川ほか2013、戸田ほか2014)。本研究は地理学的視点を取り入れたガイドブックを作成するため関連分野の書籍を対象とした出版状況を把握し、その地域的特徴の一端を考察することを目的としている。
2014年春の日本地理学会において筆者らはガイドブックで取り上げられている地域の特徴について明らかにした(横山ほか2014)。これにより取り上げられる地域には偏りがあり、特に東京都を対象地域とした書籍点数が最も多いことが明らかになった(表1)。そこで本発表においては東京都を扱っている旅行ガイドブックが都内のどのような地域を対象としているのかについて報告を行った。
東京都を対象とした旅行ガイドブックの地域的特徴して、1つの市区町村を対象とするものよりも比較的広い範囲をカバーしている複数の市区町村を対象とするものが多いことがわかった。また『出版年鑑2003』のデータと比較したところ、ガイドブックの出版された年度によりその当時の流行が如実に表れている。これは新宿区を対象とした旅行ガイドブックのほとんどが韓流ブーム時の新大久保を対象としたものであることからもわかる。今回は「歴史」部門の中の「地理・地誌・紀行」のみの検討であったが、今後は関連する「社会科学」や「自然科学」などの部門の書籍についても考察を行う予定である。