日本地理学会発表要旨集
2020年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: S305
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発表要旨
大都市圏内の居住地移動と健康
*中谷 友樹埴淵 知哉
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抄録

本研究では、近隣スケールでの社会経済的な居住地域分化と健康格差の関係を紐解くために、大都市圏内で居住地移動を実施した人に着目し、その移動によって生じた居住する近隣環境の評価がどのように変化し、自覚的健康度ならびに健康行動にどのような変化が関連しているのかを、東京大都市圏で実施した疑似縦断的調査のデータ解析よって検討した。その結果、地理的剥奪水準の高い地区への移動が、自覚的健康度の低下、運動頻度の低下、アルコール摂取頻度の増加、喫煙量の増加(ないし喫煙の開始)と統計学的に有意に関連していた。本分析の結果は、大都市圏内の移動に伴う居住地の社会経済的な地域特性の変化が、健康に関連する行動・自覚的健康度の変化と結びついていることを明らかにした。社会経済的に選択的な居住地移動が、居住者の社会経済的構成の地域差を作り出すのみならず、居住地の環境特性の違いを通しても健康の地理的格差の形成に寄与していることが示唆された。

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© 2020 公益社団法人 日本地理学会
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