日本地理学会発表要旨集
2014年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S0303
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発表要旨
高等学校「課題研究」におけるAED配置の授業実践
*小橋 拓司
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抄録
1 はじめに
加古川東高等学校では、理数科において課題研究(2単位)の授業をおこなっている。本校は科学技術振興機構(JST)におけるSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)の指定を受けており、課題研究はその教育の柱の一つとなっている。
具体的には、科学的探求などを目的として2年生で行われ、1クラス8~9班、5人程度がテーマごとに集まり、具体的な研究課題を決めて実施している。2011年度と2013年度において、「空間科学」の講座を担当し、AEDの空間配置に関する研究指導したので、その実践を報告する。
2 課題研究のねらい
「空間科学」では、地図を作成し、作成した「地図に語らせる」ことを課題研究の狙いとしている。具体的には次の3点をあげたい。
  ①「足で稼ぐ」こと。高校生らしく体力で勝負。
  ②高校生徒らしい「グループ研究」。
  ③「社会への発信」し、生徒にやる気を出させる。
3 授業実践の経過
(1)1年目(2011年度)
・加古川市消防本部におけるインタビュー調査
(概要とAED経緯度データの入手)
・AED講習会に出席(岩船論文のシミュレーションを検討)
・模擬AEDの携帯走行実験
・校内BLSマップの作成
・加古川市BLSマップの作成(バッファ処理)
・加古川駅から市役所周辺のAED設置調査(聞き取り調査)
・加古川駅周辺の詳細マップ作成
・夜間のBLSマップ、コンビニマップの作成
(2)2年目(2013年度)
・近隣高層住宅階段で模擬AEDの携帯走行実験(中層の校舎で往復実験が可能か確かめる)
・校内での模擬AED携帯走行実験(垂直方向)
・エクセルを用いて、3次元モデルの作成
・神戸市三宮周辺でメッシュマップを作成(AED位置情報を入れる)
・BLS安全域の立体マップの作成
・三宮駅周辺の現地調査(AEDの配置を現地で確認)
・メッシュマップと立体表現図の作成
4 実践におけるトピック
①メソスケールの問題:校内での実験スケールと加古川市内の間には大きなスケールギャップがあることに気づき、加古川駅周辺マップの作製をおこなった。
②アドレスマッチングの失敗:市内の医院にAEDがあるのでアドレスマッチングで地図化を試みたが、精度の差があり断念。
③バッファのかけ方に対する生徒からの疑問。
④生徒のもつ論文化のスキルが低い。
⑤高校生男子の走力を用いていいのかという疑問。
⑥垂直走行は徐々に疲れるのではないか。それを一次式で示していいのか、という疑問。
⑦役所データが現実のAEDをすべて表しているわけではない。
5 AED配置研究からの広がり
校内では「保健だより」の執筆や校内研究発表を通じて、AEDへの理解を広げることができ、本校もライフサポートステーションに登録された。
また、対外的には、加古川市役所(危機管理室)において、プレゼンテーションをおこない、コンビニにおけるAED設置を訴えた。
6 おわりに
実験によって「諸条件の設定→モデル作成→モデルの現実との検証」という流れは、仮説検証型の学習過程と整合している。理数科生徒にとっては、実践しやすい課題であった。また、地域調査の素材としても適していた。生徒は実践を通して救急医療に対する関心を深めていった。
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© 2014 公益社団法人 日本地理学会
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