抄録
我が国の近代化過程において,不可欠な役割を果たした地方拠点地域(都市)に,本シンポジウムでは注目している。本発表では有力な国際港湾都市として近代日本で重要な役割を果たした地方都市である敦賀と長崎に注目し,これらの都市の発展・変容過程を追い,それに対していかに人間主体が関わってきたのかを追究した。それによると,2都市は国際港湾都市である点は共通しているが,その発展プロセスや都市機能には差異を有し,人間主体のそれへの関わり方にも差異を有していた。端的に言えば,敦賀では単一の人物がこの都市の発展を自身の成長とともにリードし,自身がこの都市に影響を及ぼす構造を体現する「特別な人間主体」となった。一方,長崎の発展はより多くの人間主体が関わる形で進行していった。個々の人物は各々の意図をもって,また各々に関わりあいながら,長崎の近代化に貢献した。都市の諸属性の差異がこうした人間主体の意図や活動に強い影響を及ぼしていると考えられる。