抄録
三浦半島南端の毘沙門湾付近は,1923 年と1703 年の関東地震の時にそれぞれ約1.2m隆起し,地震間では約 3.7 mm/年の速度で沈降している.最近,半島南西部の小網代湾の堆積物調査から1703年の一つ前の地震の履歴が1060年~1400年の間と推定した[Shimazaki et al., 2011].本研究は,三番目の関東地震の発生履歴について,さらに詳細な情報を提示し,その上で地殻変動の蓄積と地震の発生間隔との関係について考察する. 毘沙門湾に注ぐ4つの谷のうち東側の谷底では,高さ1~2mの低崖で画された海成段丘が5段認められ,間欠的に発生する関東地震に対応する可能性が指摘されている[地理院,1981].最低位の段丘面は標高+2.1mに分布し,海岸沿いに西側の谷まで発達している.本研究は,この最低位の段丘面をさらに細分して形成過程を検討する.